― 蜻 蛉 ― 


いつの日だったか…蜻蛉を見た。


りんが指をさし、今よりも幼い声で私に呼びかけた。

「殺生丸さま。」

りんの呼びかけに少し視線を上げる。

「あれ、飛んでいるの、『蜻蛉』だって。」

透けるような薄い羽をした蟲。宙を、彷徨うように舞っている。りんは飽くことなく蜻蛉を目で追っていた。

「あ…」

蜻蛉が舞い散るように、空中から落ちていく。
りんは、ずっとその姿を見続けていた。蜻蛉の命が尽きるその時まで。 手を口に当て、眉を寄せ。しかし、泣いてはいなかった。


…何故なのか。ふと、そのりんの小さな後ろ姿を思い出す。


私は…。
りんが遠くに行かぬよう、しっかりと捕まえた。





10,000hit御礼ということで、フリー配布したイラストです(2007.6.2〜2007.6.17)。拙サイトへご訪問してくださった皆さま、ありがとうございました!

興味がございましたら、別バージョンの「木漏れ陽」は、
こちらからご覧くださいませ。


2007.6.18 @Richomaru