― 月 煌 ― 月の光が寝所を仄白く照らしていた。 少女―もう娘、と言っても良いだろう―は、その部屋の小窓からじっと月を見つめていた。 さらにその娘を見つめる銀色の妖が一人。 静寂の中。微かな身じろぎでさえ、この刻が、 この空間が壊れるのだ、と言いたげに。 月の光が寝所の褥を仄白く照らし―。 ふいに雲が中空の月を隠し、辺りが蔭ってゆく。 娘の姿が一瞬、消え入りそうになる。 妖は… 確かめたかった、 その身体を。 娘を強く抱き寄せ、抱き締める。 確かめたかった、 この娘は確かにここに在る―と。 この夜が、この刹那が。永遠(とわ)でない事を知りながら。 2008.11.10 @Richomaru |